速読の脳の仕組みって?科学的にわかりやすく解説

速読の脳の仕組みって?科学的にわかりやすく解説 速読の効果・影響

今回は、速読の脳内の仕組みについて、脳の活動を測る機械(fMRI)を使った科学的な研究結果を、あまり難しくない言葉で、わかりやすく解説していきます。

この記事を読めば、速読の時の脳の仕組みが理解できるよ!

速読をする時の脳の仕組み:研究でわかったこと

速読の研究

脳がどうやって速読を支えているのか、その仕組みについて、まずはこれまでの研究をざっくりまとめて「わかったこと」を見ていきましょう。

参考論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

「速く読む」と脳のどこが活性化する?

「速く読む」と脳のどこが活性化する?

fMRIを使った実験では、参加者に色々な読書ゲームをやってもらって、その時に脳のどこが「頑張ってるサイン」を出すか、その仕組みを科学的に調べています。特に速読をした時の脳に注目すると、いくつかの面白い発見があるんですよ。

まず、読むスピードを「快適な速さ」「ゆっくり」「速く」みたいに調整して比べてみると、脳の特定の場所が、スピードが上がるほど「もっと頑張るぞ!」って強く反応することがわかってるんです。

特に、脳の左側にある「紡錘状回(ぼうすいじょうかい)」っていう場所とその周りの「後頭側頭部(こうとうそくとうぶ)領域」っていうところが、まさにそうなんですよ。

原文: “Tasks that control the speed of reading (e.g., comfortable pace, slowly, and rapidly) result in a gradient of activation in the left fusiform gyrus and the surrounding OT region, where accelerated reading shows the most activation and slow reading the least.”

和訳: 「読書速度を制御するタスク(例:快適なペース、ゆっくり、速く)は、左紡錘状回とその周辺のOT領域に活性化の勾配を生じさせ、加速された読書が最も活性化を示し、ゆっくりとした読書が最も低い活性化を示しました。」

引用:研究論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

これって、速読のように文章を速く読もうとすると、文字を「目で見て認識する」っていう一番大事な部分が、より一層頑張ってくれるっていう仕組みです。

それから、「迅速自動命名(RAN:ラン)」っていうタスクってご存知ですか?

【迅速自動命名(RAN:ラン)】
文字とか数字とか、知ってる色とか絵とかを、できるだけ速く声に出して言うゲームのこと。

このRANタスクが上手な人って、読書も速くて流暢(スラスラ読める)なことが多いんですよ。で、このRANタスクをやってる時も、速読をしてる時と、脳の「頑張ってる場所」が似ていることがわかってるんです。

具体的に言うと、

  • おしゃべり担当(下前頭回)
  • 言葉の意味を考える担当(中側頭回)
  • 手先や目を動かす担当(前頭前野)
  • 空間を認識したり注意を向けたりする担当(頭頂葉)
  • バランス担当(小脳)

こういう、脳のいろんな部分が、速読やRANタスクで共通して活性化する傾向が見られます。これらは、まさに私たちが言葉を認識したり、意味を理解したり、声に出したりする時に使う、いわば「読書のための脳のチーム」の主要なメンバーたちなんですね。

さらに、ちょっと面白い話なんですが、中国語を話す人たちの研究では、脳の「司令塔が集まる部分(灰白質)」の量と読書流暢性との間にも関係があることが示されているんです。この司令塔部分が多いほど、読書流暢性が高い、というような結果もあります。

速読が出来る人は脳の仕組みが変化している

脳が変化しているイメージ画像

脳の活動だけでなく、脳の「形」とか仕組み、神経細胞が情報をやり取りする「連絡網」(白質)といった構造的な特徴も、速読能力に深く関わってるという事が科学的に明らかになっています。

まず、さっき話した「司令塔が集まる部分(灰白質)」ですが、普通に読書ができる人たちの場合、この部分の量が増えると読書流暢性が上がる傾向が見られます。

でも、読書障害(ディスレクシア)のある人たちだと、この関係が逆になったり、あんまり関係が見られなかったりすることもあるんです。これは、脳が成長する時期によっても変わる可能性があって、若い頃は脳が育つにつれて量が豊富になり、読書も得意になるけれど、大人になるとまた違うパターンになる、なんてことも指摘されてるんですよ。

次に、脳の「連絡網(白質)」についてです。

ここは、神経細胞同士をつなぐ「高速道路」みたいな役割をしていて、情報が脳のあちこちに素早く伝わるために、ものすごく大切なんです。DTIっていう技術を使うと、この連絡網の「質」を測ることができるんですけど、速読が上手な人ほど、この連絡網の質が良い、つまり情報伝達がスムーズだっていう研究結果が多いんですよ

特に注目されている連絡網がいくつかあります。

音を聞いて理解する連絡網
(上縦束)
脳のおでこのあたりから後ろの方までを長くつなぐ、言葉の音を理解する時に使う連絡網です。
文字の形を認識する連絡網
(下縦束)
脳の後ろの方から下の方をつなぐ連絡網で、文字を見た瞬間に認識する速読の「要」となる部分に関わっています。
脳の奥と表面をつなぐ連絡網
(放線冠)
脳の奥にある「情報のハブ(視床)」と、脳の表面にある「司令塔」をつないでいる連絡網で、ここも速読に関わると言われています。

これらの連絡網の質が良いほど、速読が上手だっていうデータが多いんです。脳の中の情報が、スムーズに、そして正確に「あっちこっち」に伝わることは、速読には絶対必要な仕組みってことなんですね。

ただし、ここでも健常な読者とディスレクシア(読書障害)の読者では、脳の形や連絡網の質と流暢性の関係性が異なる場合もあります。例えば、ディスレクシアの若者では特定の連絡網の質が低下している、といった報告も。

ちょっと面白いことに、脳の司令塔部分の研究では、読書に関連する活動は左半球に強く偏っていることが多いんですが、連絡網の研究では右半球も比較的多く関わっていることが示唆されているんですよ。これって、右半球が速読の流暢性において、私たちが思っているよりも大きな役割を果たしている可能性がある、ってことなのかもしれませんね。

ここまでで、速読が脳の特定の場所を「もっと頑張らせる」こと、そして脳の「形」や仕組み、「連絡網」の質も速読能力と関係していることが、ざっくりと分かってきましたでしょうか?

特に、「速く読む」っていうのは、脳の「目で見て認識する部分」がすごく頑張っていて、さらに脳のあちこちをつなぐ「連絡網」の質も大事だ、ということなんですよ。

複数の研究結果から見えてきた速読の脳の仕組み

速読についての複数の研究資料

ここまでの個々の科学研究から見えてきた傾向と、さらにたくさんの研究結果を統計的にまとめて「共通点」を探す「メタアナリシス」っていう方法を使った結果を合わせると、速読時に脳のどの部分が「みんな共通して」活発に働くのか、よりハッキリした仕組みが見えてきました。

このメタアナリシスでは、たくさんのfMRI研究のデータを集めて、速読の際に脳のどこが「共通して頑張ってるサイン」を出すのか、その仕組みを明らかにしています。

研究者たちは、「速く単語を認識する」ために重要な脳の「文字認識の高速道路(腹側読書経路)」と、読書を「自動化」してスピードアップさせるために役立つ「右のバランス担当(小脳の一部)」が特に強く活性化するだろう、って予想していました。

この分析には、厳しいルールで選ばれた18もの研究が使われました。これだけの数をまとめることで、より確かな、速読時の脳の仕組みが見えてくるわけです。

共通して見つかった速読で使われる脳の仕組み

たくさんの科学研究から見えてきた、速読の時に共通して頑張る脳の仕組みを発表しますね!

研究者たちが見つけたのは、速読やRANタスク(素早く名前を呼ぶタスク)と強く関係して活発になる、7つの主要な「脳の頑張りポイント」でした。

これらの場所は、これまでの個別研究で言われていたことや、研究者たちが予想していた「読書のための脳のチーム」のメンバーと、すごくよく重なっていたんですよ。

具体的にどんな場所が活性化していたか、見ていきましょう。

  • 手先や目を動かす担当(左前頭前野:ぜんとうぜんや)」
  • 文字をパッと見て認識する担当(左下後頭回:かこうとうかい)」
  • 注意のコントロール役(両側の上頭頂小葉:じょうとうちょうしょうよう)」
  • 言葉の意味を考える担当(左中側頭回:ちゅうそくとうかい)」
  • 集中力やミスを見つける場所(両側の島皮質:とうひしつ)」

面白いことに、最後の「集中力やミスを見つける場所(両側の島皮質)」以外は、どの場所も「読書」「単語」「言語」といった、読書に関連するキーワードと強く結びついていることがわかったんです。これって、速読が単に「読む」っていう行為だけでなく、もっと広い範囲の認知的な努力も必要としてるってことなんですね。

速読は文字を一瞬で認識する機能が活性化!

研究者たちの予想通り、「文字認識の高速道路(腹側読書経路)」が速読において非常に重要な役割を果たしていることが、このたくさんの研究をまとめた分析でも強く示されました。

この高速道路は、脳の左側にある「文字をパッと見て認識する場所」(例えば、下後頭回や紡錘状回、下側頭回)と、「言葉の意味を考える場所」(中側頭回)でできています。

普段から知っている単語を、一瞬で「あ、これ知ってる!」って認識する時に、この高速道路が使われてるんですよ。

原文: “The ventral reading pathway, composed of left OT regions (e.g., IOG, fusiform gyrus, inferior temporal gyrus) and the MTG, is recruited when typical readers rapidly recognize familiar words (Kearns et al., 2019; Pugh et al., 2001).”

和訳: 「左の後頭側頭部(例えば下後頭回や紡錘状回、下側頭回)と中側頭回からなる『腹側読書経路』は、普通の人たちが知っている単語を素早く認識する時に活性化されることが分かりました。(Kearns et al., 2019; Pugh et al., 2001の研究から)

引用:研究論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

特に、「文字をパッと見て認識する担当(左下後頭回)」は、今回の分析で見つかった中でも、すごく活性化されていました。この場所は、私たちが文字や単語を見たときに、「これは読める形だ!」って瞬時に判断する、いわば「文字の目利き」みたいな役割をしてるんですよ。速読では、この「目利き」がどれだけ速いかが勝負ですよね。

そして、「言葉の意味を考える担当(左中側頭回)」も、この文字認識の高速道路の一部として活性化していました。

この場所は、単語の意味を理解したり、単語がどういう部分でできているか(例えば「走った」が「走る」と「た」でできていること)を素早く解析したりするのに役立つって言われています。

速読って、ただ文字を追うだけじゃなくて、その意味を瞬時に把握することが求められますから、この「意味を考える担当」がしっかり働くこともすごく大事なんですね。

原文: “These results support the hypothesis that the ventral reading pathway contributes to reading fluency. Activation in these regions increases as reading speed increases in single letter, single word, and sentence reading, regardless of whether the speed is controlled by the study paradigm or calculated as reaction times from the participant.”

和訳: 「これらの結果は、『腹側読書経路』が速読(流暢な読書)に貢献するという考え方を支持しています。これらの場所の活性化は、一文字、単語、文章を読むスピードが上がるにつれて増加しました。これは、読書スピードが実験で決められていたか、読んだ人の反応時間から計算されたかに関わらず、同じ傾向が見られました。」

引用:研究論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

これらの結果は、「速読」っていうのが、単に目を速く動かすだけじゃなくて、脳が文字の形を素早く認識し、その意味を素早く理解するという、とっても高度な情報処理を、ものすごいスピードでやっていることを示しているんですよ。文字を見た瞬間に意味がパッと頭に入ってくる感覚、まさに速読の醍醐味ですよね!

それから、この分析では、単語の解読や音の処理を担う「音読のための道筋(背側読書経路)」の場所も、速読に貢献していることがわかりました。

原文: “The current meta-analysis revealed both ventral and dorsal reading pathway regions contributing to reading fluency, suggesting that fluent reading requires the successful integration of these two pathways.”

和訳: 「今回の分析で、速読(流暢な読書)には『腹側読書経路』と『背側読書経路』の両方が貢献していることが明らかになりました。これは、スムーズに読むためには、この二つの経路がうまく協力し合うことが必要だということを示唆しています。」

引用:研究論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

つまり、速くスラスラ読むためには、単語を一瞬で認識する「高速道路」と、言葉の音や構造を理解する「道筋」の両方の仕組みが、まるで一流のチームみたいに、うまく連携して動く必要がある、ってことなんですね。

速読は読書とは関係のない脳の機能も活性化されている

今回の分析では、さっきもちょっと話した「脳の司令塔(左前頭前野)」と「注意のコントロール役(両側の上頭頂小葉)」も活性化していることがわかりました。

これらの場所は、読書専用の場所ってわけじゃなくて、実は読書以外の色々な認知的な作業(頭を使うこと全般)にも深く関わってるんですよ

まず、「脳の司令塔(左前頭前野)」ですが、ここは「体を動かす司令塔」みたいな場所で、特に「声に出す時の口の動き」や「文字を追う時の目の動き」といった、読書に関わる運動的な部分をサポートしています。

他にも、言葉の音を処理したり、複雑なタスクを効率的にこなすための「頭の回転」にも関わると言われています。速読では、素早く文字を読み進めるだけでなく、その言葉を頭の中でスムーズに「声に出すイメージ」をしたり、次にどこに目を動かすかを決めたりすることも大切ですから、この司令塔が頑張るのは当然ですよね。

次に、「注意のコントロール役(両側の上頭頂小葉)」。ここは、私たちの「集中力」をコントロールする「メインの司令塔」の一つで、「今、どこに集中するか」を決める役割があります。

速読では、たくさんの文字の中から必要な情報に素早く焦点を合わせたり、途中でミスをしないように気をつけたりするために、この「集中力の配分」がものすごく重要な仕組みなんです。

実験では、文字を認識するタスクや、ごちゃごちゃした文字の中から目的の文字を見つけるタスクで、この「注意のコントロール役」が活発になることが示されています。つまり、ここは、速読の際に必要な「集中力」や「注意を素早く切り替える能力」を支えている、って考えられますね。

そして、今回の分析で、ちょっとびっくりしたのが、「集中力やミスを見つける場所(両側の島皮質)」という脳の領域が共通して活性化していたことです。

正直、この場所は、これまでの読書研究ではあまり「主役」として語られることがなかったんですよ。他のデータベースで調べても、「痛み」とか「衝動を抑える」といった、読書とは直接関係なさそうなキーワードと結びついていることが多いんです。

でも、この島皮質も、実は「多才」な場所なんです。集中力、頭の回転の速さ、そして「あ、これ間違いだ!」ってミスを見つける能力といった、色々な「頭を使う機能」に関わっていることが最近の科学研究でわかってきているんですよ。

原文: “In general, the insula has been associated with a range of cognitive abilities (Shelley & Trimble, 2004), and more recently has been functionally parcellated into three subdivisions (Chang et al., 2013). The current meta-analytic insular clusters overlap with the anterior dorsal insula, which is associated with higher-order cognition and executive functions as identified through forward and reverse inference using the Neurosynth database. This insular subdivision was overwhelming “cognitive” compared to the other two divisions, which were mostly associated with either emotion, gustation, and olfaction processing or pain, somatosensory, and sensorimotor processing.”

和訳: 「一般的に、島皮質は様々な『頭を使う能力』(Shelley & Trimble, 2004)と関係があり、最近の研究では3つの細かい役割に分けられることが分かってきています(Chang et al., 2013)。今回の分析で見つかった島皮質の『頑張ってるサイン』は、特に『高次の頭を使う能力』や『頭の回転』と関連する前背側島皮質という部分と重なっていました。この部分の役割は、感情や味覚、嗅覚、痛みといった感覚と関連する他の2つの部分に比べて、圧倒的に『頭を使うこと』だったんです。」

引用:研究論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

つまり、島皮質の中でも、特に「頭を使う」ことに特化した仕組みの部分が活性化していた、ってことなんですね。

速読では、速く正確に読むために、適切な集中力を保ち続けたり、もし間違えても素早く気づいて修正したりすることが求められます。これらの認知的な「頑張り」を、この「集中力やミスを見つける場所」がサポートしてくれているのかもしれません。

原文: “Therefore, similar to the SPL, the insular cortex may provide domain-general support to fluent reading.”

和訳: 「したがって、上頭頂小葉(SPL)と同様に、島皮質も、スムーズな読書に対して『なんでも屋さんのサポート』を提供している可能性があります。」

引用:研究論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

つまり、島皮質は、読書にピンポイントで特化した役割というよりは、どんな頭を使うタスクでも役立つような、言ってみれば「縁の下の力持ち」として、速読を支えている仕組み、と考えることができますね。

ここまでで、速読には、言葉を一瞬で認識する「高速道路」が超重要だってことが再確認されましたね。

それに加えて、言葉を頭の中で発する準備や注意を向ける能力、そして間違いを見つける能力まで、脳のいろんな場所がチームで連携していることが見えてきました。まさに、脳全体が協力して「速読」を実現しているイメージですね!

読書が苦手な人と速読ができる人の脳の違い

さて、ここまでは主に「読書が得意な人」の脳について見てきましたが、読書にちょっと困難を抱える人たち、特に「ディスレクシア(読書障害)」と呼ばれる方々の場合、脳の働きは少し違うんです。これは速読の仕組みを理解する上で、良い比較対象になります。

ディスレクシアの人たちの脳を調べてみると、普通に読書ができる人たちと比べて、速く読む時に「頑張るはずの脳の場所」が、あまり活発に働いていない傾向があることがわかっています。

原文: “Relative to typical readers, DD readers tend to show decreased activation in brain regions engaged during fluent reading.”

和訳: 「普通に読書ができる人たちと比べて、ディスレクシアの人たちは、スムーズに読む時に使う脳の場所の活発さが低い傾向にありました。」

引用:研究論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

これって、読書が得意な人が速読で使う「脳の筋肉」が、ディスレクシアの人では十分に鍛えられていない、といった感じでしょうか。

さらに興味深いのは、ディスレクシアの人たちは、左半球の読書に関わる脳の場所があまり活発でない分、右半球の読書に関わる似たような場所を、より多く使う傾向があるんです。

これは、左半球の働きがちょっと足りない分を、右半球で「なんとか補おうとしている」んだと考えられています。まるで、利き腕が使えない時に、もう片方の腕で一生懸命頑張るようなものですね。

また、幼い頃に、さっきのRANタスク(色や数字を素早く言うゲーム)の結果が悪いと、その後、読書がスラスラできない(流暢性が低い)ことが予測されるんですが、その背景には、幼い頃からすでに読書ネットワーク内の脳活動が低かったり、脳のつながりが弱かったりすることが関係している可能性も言われているんですよ。つまり、速読の「土台」って、案外子どもの頃から脳の中にあるのかもしれないですね。

速読における脳の仕組みは、まだまだ研究段階

さて、ここまで、速読の脳の仕組みについて、色々な角度から見てきました。たくさんの「へぇ〜!」ってなる知見が得られていますが、まだ乗り越えなければならない課題もたくさんあるんです。

速読の研究は難しい

まず、脳の科学の研究では、まだまだ実験に参加してくれる人の数(サンプルサイズ)が少ない研究が多いんです。

これは、MRIのような高い機械を使うことや、参加してくれる人の協力がすごく大変なことなど、色々な理由があるんです。参加者の数が少ないと、たまたま出た結果なのか、本当に「誰にでも当てはまること」なのか、判断が難しくなっちゃうことがあるんですよ。

原文: “Some studies included in the meta-analysis had small sample sizes, which lack appropriate statistical power (Lin, 2018; Turner et al., 2013). Because we identified only 18 studies that fit the inclusion criteria, we decided to include all relevant papers regardless of sample size, with the intention to include more studies as they are published. The purpose of these results is to establish a starting point for future research investigating the neural underpinnings of reading fluency.”

和訳: 「今回の分析に使われた研究の中には、参加者の数が少なく、統計的に確かな結果を出すにはちょっと物足りないものもありました(Lin, 2018; Turner et al., 2013の研究から)。研究者たちは、分析の条件に合う研究が18件しか見つけられなかったので、これからもっと研究が出てくることを期待して、参加者の数に関わらず関係する論文は全部含めることにしました。これらの結果の目的は、速読の脳の仕組みを調べる今後の研究の『第一歩』として確立することです。」

引用:研究論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

だから、今回の「たくさんの研究をまとめた分析」も、ずいぶん確かなことがわかったとは言えるけど、速読の脳の仕組みを完全に解明するには今後のさらなる研究がやっぱり必要、っていう立ち位置なんですよ。

もう一つの大きな課題は、「読むスピードが上がった時に脳が活発になるのは、本当に速読の仕組みが働いているからなのか、それとも脳にかかる負担が増えたからなのか?」っていう点です。

例えば、速く読もうとすると、脳は短い時間でたくさんの情報を処理しようとしますよね。これ自体が「脳にかかる負担(認知負荷)」の増加と見なされる場合もあるんです。

さっきのRANタスクのように、あまり負担がないと考えられるタスクと、文章を速く読むような負担が大きいタスクが混ざっていると、どっちの影響が大きいのかをはっきりさせるのが難しい場合があるんですよ。

あと、脳の特定の場所だけをじっくり見る「ピンポイント分析」っていう方法も仕組みを研究する上でよく使われるんですが、これだと、あらかじめ注目していた場所以外に、速読の仕組みに貢献しているかもしれない「隠れた主役」を見落としてしまう可能性があります。だから、脳全体をまんべんなく見る分析も大事になってくるんです。

速読の脳の仕組みの謎とこれからの研究

まだまだ速読の脳の仕組みには、たくさんの「未解明の謎」が残っています。

例えば、さっきも少し触れた、脳の奥深くにある「バランス担当(小脳)」とか「情報のハブ(視床)」、「習慣化を担当する場所(被殻)」といった「脳の奥深くにある場所」の役割です。

これらは、体の動きをスムーズにしたり、学習を自動的にできるようしたりするのにすごく重要だと言われています。速読の「自動化」っていう側面を考えると、これらの場所がもっと深く関わっているはずですが、まだその詳細な役割ははっきりとは分かっていません。

そして、脳活動の増加が、脳が効率的になったことを示すのか、それともまだ非効率だから頑張ってることを示すのか、という問題も残っています。

読書が得意な人では活動が減るのに、ディスレクシアの人では活動が増える。これって、どっちが「良い」脳活動のパターンなんでしょうか?

もし、脳活動の減少が「省エネ」の証拠だとすると、ディスレクシアの人で活動が増えるのは、まだ「頑張っている最中」なのかもしれません。この「変化の方向性」の謎が解ければ、私たちは速読の仕組みをより深く理解できるようになるはずです。

最終的な目標は、スラスラ読める人の脳の「特徴的な目印(バイオマーカー)」を見つけることです。これが見つかれば、ディスレクシアのような読書障害のタイプを細かく診断したり、その人に合った個別最適化された読み方をサポートしたりできるようになるかもしれません。

まとめ

さて、長くなりましたが、速読の脳の仕組みについて、少しはわかっていただけましたでしょうか?

今回の話で分かったことは、速読は単なる「目の訓練」じゃなくて、脳の奥深く、そして広い範囲にわたる複雑な活動によって支えられている、ということでした。

特に重要なのは、私たちが「単語をパッと見て認識する」時に使う脳の「文字認識の高速道路」が、速読において主役級の活躍をしている、という点です。ここが高速で働くことで、文字の形を瞬時にとらえ、その意味を素早く理解できるようになるんです。

そして、単語の解読や音の処理を担う「音読のための道筋」との連携も絶対必要で、この二つの道がスムーズに協力し合うことで、よりスラスラとした読書が実現されます。

さらに、脳の「司令塔」や、注意をコントロールする「注意のコントロール役」、そしてあまり注目されていなかった「集中力やミスを見つける場所」といった、一般的な頭を使う機能をサポートする場所も、速読の「縁の下の力持ち」として活躍していることが明らかになりました。

原文: “Both reviews identified regions outside the canonical reading network that contribute to reading fluency, such as the bilateral insula and superior parietal lobule.”

和訳: 「これまでの研究も、今回の分析も、どちらも、読書ネットワークの中心ではないけれど、両側の『集中力やミスを見つける場所(島皮質)』や『注意のコントロール役(上頭頂小葉)』といった場所が、速読に貢献していることを突き止めました。」

引用:研究論文『Neural bases of reading fluency: A systematic review and meta-analysis』

これらの科学的な知見は、私たちが「速く読む」っていう能力が脳の中でどういう仕組みで成り立っているのかを解き明かすための、とっても大切な一歩なんです。

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